論文解説 |
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2013
年 Yoneda R., Takahashi T., Matsui H., Takano N., Hasebe Y., Ogiwara K., and Kimura A.P. Three testis-specific paralogous serine proteases play different roles in murine spermatogenesis and are involved in germ cell survival during meiosis Biology of Reproduction 88(5): 118, 1-14. PubMed HUSCUP 生物学科HP の記事 精子形成は非常に複雑なメカニズムで、古くから世界中で研究されていますが、その全容はいまだに明らかにされていません。今回私たちは精子形成に対する理解を進めるために、精巣特異的に発現する3つのプロテアーゼPrss42/Tessp-2、Prss43/Tessp-3、Prss44/Tessp-4 に注目して解析を行いました。まず、これらの遺伝子の系統関係を調べたところ、3つのPrss/Tessp遺伝子は進化の過程で祖先遺伝子の重複によって生じたパラログであることがわかりました。次にこれらの遺伝子の発現部位をmRNAレベルとタンパク質レベルで調べたところ、3つのPrss/Tessp のmRNAはすべて精母細胞に発現していましたがタンパク質の局在は異なることがわかりました。具体的には、Prss42/Tessp-2が二次精母細胞と精細胞の細胞膜と細胞質に、Prss43/Tessp-3が精母細胞と精細胞の細胞膜に、Prss44/Tessp-4が精母細胞と精細胞の細胞質に局在していたのです(下図)。このことは、パラログである3つの精巣特異的遺伝子がお互いに異なる機能を持つことを示唆しています。最後に、これらのプロテアーゼの精子形成における役割を検証するために、精巣片の器官培養を行いました。マーカー遺伝子の発現から、この培養系では減数分裂が正常に進むことがわかりましたが、ここにPrss42/Tessp-2あるいはPrss43/Tessp-3に対する抗体を添加したところ、減数分裂がそれぞれ二次精母細胞と一次精母細胞の段階で停止することがわかりました。このとき、細精管内の生殖細胞はその数を減らしており、多くがアポトーシスを起こしていました。この結果は、Prss42/Tessp-2とPrss43/Tessp-3が精子形成において生殖細胞の生存に必須であることを示唆しています。Prss/Tesspはプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)なので、生殖細胞を取り囲む細胞外マトリクスやセルトリ細胞との結合を分解することで、生殖細胞の内腔への移動を手助けしているのかもしれません(下図)。今回の成果はこれまで減数分裂との関連がほとんど調べられてこなかったプロテアーゼの機能を示唆するものであり、精子形成メカニズムの全容解明に役立つことが期待されます。 |
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