論文解説





2013 年

Yoneda R. and Kimura A.P.

A testis-specific serine protease, Prss41/Tessp-1, is necessary for the progression of meiosis during murine in vitro spermatogenesis

Biochemical and Biophysical Research Communications 441: 120-125.

PubMed  HUSCAP

プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は我々の体の中でさまざまな生命現象に関わる非常に重要な分子ですが、精子形成時の減数分裂過程におけるその機能はあまり解明されていません。我々はマウス精巣の減数分裂過程で生殖細胞特異的に発現する4つのセリンプロテアーゼ(Prss41/Tessp- 1〜Prss44/Tessp-4)を研究することで、この課題に取り組んでいます。今回は4つのうちPrss41/Tessp-1が減数分裂の初期段階の進行に重要であることを明らかにしました。Prss41/Tessp-1は、そのmRNAが精原細胞、一次精母細胞、セルトリ細胞に発現すること、および、そのタンパク質が精原細胞の細胞膜と一次精母細胞のゴルジ体に局在することが知られていました(Takano et al., 2005; Takano et al., 2009)。しかし、セルトリ細胞における局在は不明であったため、今回はまずセルトリ細胞におけるPrss41/Tessp-1タンパク質の局在を調べることから始めました。セルトリ細胞の生化学的な分画と細胞組織化学染色を行った結果、このタンパク質はセルトリ細胞内の膜画分に局在することがわかりました(Fig. 1)。次に、Prss41/Tessp-1の減数分裂における機能を知るために、精巣組織断片のin vitro器官培養を行い、その際にPrss41/Tessp-1タンパク質に対する特異的抗体を添加しました。Prss41/Tessp-1タンパク質が細胞膜に局在しているのは精原細胞のみであるため、精原細胞における機能が抗体によって阻害されることが期待されます。この実験の結果、Prss41/Tessp-1抗体は精原細胞が一次精母細胞に分化するのを阻害し(Fig. 2)、アポトーシスを起こした生殖細胞を増加させました(Fig. 3)。したがって、Prss41-Tessp-1は減数分裂の最初の段階が進行するために必須である可能性が考えられます。以前の結果(Yoneda et al., 2013)と合わせると、Prss41/Tessp-1、Prss42/Tessp-2、Prss43/Tessp-4の3つのプロテアーゼは減数分裂の異なる段階で、減数分裂の進行に関わることが明らかになりました。









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